RESEARCH THEME

現在の研究テーマ:専門誌『イル・プレットロ』を通して見る20世紀イタリアのマンドリン音楽

マンドリンについて

 リュート属の撥弦楽器。4コース8弦。調弦はヴァイオリンと同じです。指やピック(羽軸、鼈甲、ナイロン)で演奏します。現在の日本で最も一般的に使用されているのは、近代ナポリ型マンドリンで、1835年ごろパスクアーレ・ヴィナッチャ(Pasquale Vinaccia, c.1806-1882)により改良されたものです。(調弦:g-d’-a’-e’’)また、近代ナポリ型から派生したローマ型マンドリンもナポリ型に次いで演奏されています。

 主な奏法としては、ピッキング、トレモロ、ダブルノート、クーレ、滑走アルペジオ、グリッサンド、重音奏法、ハーモニクス、ミュートがあります。

マンドリン音楽について

 マンドリンはアンサンブルでも広く使用される楽器です。「マンドリン音楽」とは、マンドリンやギターを中心に、独奏やアンサンブルを含む音楽のことを指します。独奏曲では、無伴奏のみならず、ピアノ、ギター(稀ですがハープも)によって伴奏されることもあります。アンサンブルでは、マンドリンの高音・低音楽器のほか、コントラバス、打楽器、管楽器などが加わることもあります。私の研究では、このような楽器を使った音楽全体を対象にしています。

研究の背景

 卒業論文、修士相当論文において、日本におけるマンドリン音楽の受容について研究しました。特に、中心人物の一人である宮内省楽部長の武井守成(1890-1949)は東京外国語学校イタリア語科の出身であり、専門誌『イル・プレットロ』など媒体を通してイタリアのマンドリン音楽が中心に受容されたことが分かりました。
 専門誌『イル・プレットロ』 (Il Plettro, Milano, 1906-1943) は、創刊者でマンドリニストのA.ヴィッツァーリ(Alessandro Vizzari,1873-1945)の主幹のもと、37年間にわたり多くのイタリア人作曲家、演奏家らによって執筆され、ミラノから国内外に向けて、当初は月に2回、1914年以降は月に1回発行された。構成は、4-16頁からなり、(初期1906-13は楽譜2頁、記事1頁+広告等1頁)、読者としては国内外のマンドリン・ギターの演奏家、愛好家が想定されました。記事は、国内外の演奏家や演奏会の紹介、コンクールの情報・講評、マンドリンやギターの音楽にかんする考察のほか、幅広い芸術音楽について解説、考察する記事も掲載された。掲載楽曲としては独奏〜合奏の編成、編曲は年に1、2曲掲載され、のべ806曲以上が掲載されました。
 『イル・プレットロ』の初出の楽曲の多くが今日主要なレパートリーとなっており、またその記事もこれまで重要な資料の一つとして扱われてきた一方、『イル・プレットロ』及びその創刊者ヴィッツァーリの活動についての研究は殆ど行われていません。しかし、『イル・プレットロ』は、20世紀前半のイタリアにて出版されたマンドリン音楽の専門誌の中で、楽譜と記事をともに掲載しながら最も長期間出版された専門誌であり、創刊者であり全期間主幹したヴィッツァーリを中心に、当時マンドリン音楽にかかわるイタリア人音楽家のほぼ全てと関わり、音楽活動のコミュニティの中心として活動した可能性を見出しました。

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